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兎澤直樹

気まぐれ社長コラム No.24「スピード」と「気配り」

*この記事は弊社ドットコネクトの学生アルバイトに配信している「気まぐれ社長コラム」の内容(2024年6月11日)を抜粋して掲載しております。


巷では、とあるニュースのインタビューで「職場で挨拶しない自由があるのではないかと思ってます」と発言した20代男性が少し話題になっているようだ。


君たちはこの発言をどう思うだろうか?


僕としては、「あなたがそうするのは全然自由だが、だとしたら「挨拶をしない人を評価しない」「一緒に仕事したくない」「信用して仕事をお願いできない」とする相手の自由も甘んじて認め、その結果に対する全責任を負う覚悟でいてね。周りのせいにしないでね」という感想だ。


だが、これは推測だが彼はきっとプライドも高いだろうから、それでもおそらく周りのせいにしてしまうだろう。かつ周りに対して非協力的で批判的、そんな人が生き続けられる世界はそう多くはないと思うから、どこかで鼻っ柱を折られて気づかない限り厳しいかもしれない。それでもチヤホヤされるのはきっと若いうちだけだ。


自由には責任が伴う。そして、自由とは自分を変えるための選択に関する概念であり、自分に都合よく周りを変えようとするための概念ではないと個人的には考えている。自由は大事だが、自由を行使できる責任を果たし、自由にさせてもらえる周りからの信用を勝ち取らなければならない。


そこで今日は、君たちが近い将来、新社会人になったときのために、「新入社員が信用を勝ち取る仕事のスタンス」というテーマで話をしたい。


いずれ君たちは大学や院をそれぞれ卒業し、社会人になる。どんな業界、どんな会社や組織に行っても、活躍できる人材には原理原則があると思っている。仕事の能力だけで決まる訳ではない。


誰もが新入社員の頃には何も分からないような状態からスタートする。それでも、新入社員の頃から実は評価が分かれていく。


では、「できること」がまだほとんどない新入社員の頃から、周りの信用を積み重ねて、数年後以降に活躍でき、長く成長し続けられる土台を築ける人はどんな特徴があるのか。


それは、「周りの期待を良い意味で裏切る」ことを常に意識して仕事することだ。


周りから「彼(彼女)はしっかりやってくれるな。次はこういうこともチャレンジしてもらおうか」といった具合に思ってもらうことで、仕事のチャンスというのは自分が周りの人から与えていただけるものなのだ。


だから、挨拶しない自由を主張していた彼を見た周りの同僚の中に、「挨拶もできない人に、自分が担当している大事なお客様に関わる仕事はとても任せられない」と感じる人が出てくるのは必然なのだ。


すると彼は仕事の経験を重ねるチャンスをひとつ逃すことになる。仕事というのは当然ながら、ただ職場の椅子に座っていれば経験や能力が積まれていく訳ではない。そういう人は市場価値が上がりにくい。


確かに人見知りで挨拶が苦手という人も多いだろうが、自分の経験や能力、市場価値を上げるために仕事の機会を得ようとするならば、苦手な挨拶くらいやった方が得ではないかと思うのだ。


話が若干それたが、まだ能力が乏しい新入社員の頃に、「周りの期待を良い意味で裏切る」ために何が必要か。僕は2つあると思っている。


①スピード

②気配り


これだ。


まずは①スピードについて。


これは、レスポンスや報告・相談、頼まれた仕事のアウトプットのスピードを速めるということ。間違っても期限を無断で越してしまうということはしない。時間を守れない(しかも遅れる旨を事前に伝えない)人は特に信用されないのだ。


ひとつ僕の実際のエピソードを紹介しよう。新卒入社したての4月に、Hさんという先輩コンサルの方からそこそこ膨大な量の調査・情報収集の仕事を任された。仕事を任されたのは月曜の夜。期限は「今週金曜日まで」と言われた。


しかし僕は、他の仕事の期限などもあったので、翌日の火曜日に全部終わらせないといけなかったのだ。そして、火曜日の朝一からその仕事に集中できる状態を事前に作り、なんとかギリギリやり終えたのだ。


その仕事の報告をHさんにすると、「1週間でもきついと思ってたのに、もう終わったの!?」と、めちゃくちゃ驚いてくれたのだ。そして5月に別の仕事を任せてもらえたし、独立してから2回ほど飲みの席でお会いしたが、今でもある程度の信用をしてくださっている様子だった。


ちなみに、スピードを速めるための仕事の基本は「即時処理」。つまり即座に着手して終わらせること。もし別の用があって即座に着手できないなら、いつやるかをその場で決めること。そしてそれを絶対に守ることだ。


次に②気配りについて。


いくらスピードが速くても、アウトプット内容が全然ダメでは当然いけない。仕事を任せてくれた先輩や上司がどういうことを求めているのかを言葉の端々から適格に察知し、それをほんの少しでもいいから上回る工夫を施すのだ。


ここでもひとつエピソードがある。入社してまだ半年も経たない頃、電話当番は新人の僕らの仕事だった。夜、会社で仕事をしていると、外線が入り、僕が取ったのだ(電話を取ると仕事がもらえる可能性が上がるので積極的に取っていた)。


すると、外出先から先輩コンサルFさんからの電話だった。内容は、「社内資料から〇〇業界について書かれたページのコピーを取って、スタッフのAさんに渡しておいてくれないか?」というものだった。


「分かりました!」と伝え、即時処理したのだ。


しかし、僕は考えた。「Fさんが本当に求めていることはなんだろうか?本当は今すぐ見たいのではないか?」と。


僕は、指示された通りのことはもちろんしたが、それだけでなく、スキャンしてPDFデータをメールに添付してFさんに送ったのだ。


「指示いただきました通り、コピーしてAさんの机に置いておきました。それと、もし不要でしたら申し訳ないのですが、もしかしたらなるべく早くご覧になりたいと思われているかもしれないと思い、念のためスキャンしたPDFデータを本メールに添付いたします。」といった文面を添えた。


するとすぐに、「まさにすぐに見たかったんだよ!ありがとう!」と返信が返ってきて、喜んでくれたのだ。


そしてある日、当時の執行役員Oさんが大手小売りチェーン店のコンサル案件を受注し、その調査を新人に任せたいが、いい新人いないか?という話が、Sさんと仲の良かったFさん(先ほどの電話の先輩)に入ったのだ。


そしてFさんは「いい新人がいますよ」と、僕を推薦してくれていたのだ。


さすがに新人がベテランコンサルで上場企業の執行役員と話すのははじめは緊張したが、Oさんのもと、その調査の仕事をなんとか頑張ったのだ。


そしてその調査結果を、Oさんがクライアントに報告したところ、それが評価されてSさんが追加発注を受けたのだ。自分がまだ仕事の能力が足りずにコンサル案件を受注できないなら、先輩を活躍させる下支えをすることに徹するつもりで仕事をしていたので嬉しかった。


当然追加の仕事も僕が任され、それも全力で頑張ったのだ。それもOさんに評価していただき、さらに後日。今度はSさんという先輩が、別のショッピングモールチェーン店のコンサル案件を受注し、執行役員のOさんにプロジェクトの参謀としての参加を依頼。そこでも、「いい若手いないか?」という話になり、「それならいい若手がいるぞ」と、今度は執行役員OさんがSさんに僕を推薦してくれたのだ。


Sさんはとても厳しく、怖い先輩という社内の評判もあったし、実際にちょっと怖かったのだが、それでも飛び込んだのだ。


そこでのパフォーマンスは、正直Sさんの100点を超えることはできなかったと思うが、前のめりな仕事ぶりとスタンスをとても評価してくださったのだ。


そしてSさんは今は独立しているが、たまにRPAに関する仕事の相談を持ち掛けてくださっている。


長くなってしまったが、何が言いたいかというと、常に相手の意図を察知し、それを上回る行動を継続して積み重ねていると、10年以上たってもゆるぎない信用が築かれるということだ。繋がってくるのだ。まさにドットがコネクトしてくる訳だ(ルー大柴風)。


僕のような凡人にはそういう戦略しかなかったのだ。


挨拶だって馬鹿にならない。相手の期待を超えて「気持ちのいい人だ」と感じてもらえるような挨拶だってやりようはあるだろうし、そこから繋がってくるものもあるかもしれない。


挨拶しない自由を主張していた彼の問題点は、挨拶という人間関係構築の最低限の潤滑油ができない云々というだけでなく、どれだけ小さいことでも、プロとして相手の期待を超えて信用を築いていこうというスタンスが欠けている点だ。


仕事は「スタンス」と「スキル」がある。みんな「スキル」に注目しがちだが、まずはスタンスを土台として、その上にあらゆるスキル(顧客のお役に立てる自分の武器)を高めていくのがいい。


信用は1日にしてならないが、崩れるのは本当に一瞬だ。土台が崩れたらどれだけスキルが凄くてもうまく機能させられない。だからこそ、その一瞬一瞬が勝負なのだ。


できる人はとにかくレスポンスが速いし、相手が求めていることを察知する感度が高い。一を聞いて十を知る感じだ。故にコミュニケーションもスムーズで気持ちが良い。そしてその期待を少しでも超え続けるのだ。もちろん僕もまだまだ未熟な修行の身だが、そういうことが大事だと思う。


P.S.

さてさて、また数億円とまでは言わないが、数千万円の価値があるコラムを書いてしまった。笑

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